傘を買いにいく
春先の夕方に降る雨の音神様たぶんイライラしてる
水滴を弾けわたしのふくらはぎ負けるな午後のどしゃ降りなんかに
脱ぎかけの濡れた靴下で線を引くこれよりあっちはきみの縄張り
この雨できみが死んだりしないよう渡す黄色い窓つきの傘
夕立がわたしの背中を突き飛ばす早くここから去れと優しく
映画なら今頃雨が降っていてびしょ濡れのまま泣いてる場面
あの日からビニール傘が増えていく最近の雨は朝に降らない
ほんとなら夜しか出ないこうもりが昼から横断歩道に出てる
春雨が雨に混じって降ってくるスープにはいることを拒否して
北風に吹かれる赤いレインコート フードが脱げてしまうのは仕様
コツコツと地を鳴らす音借りてきた傘がだんだん削れてく音
天気雨なんて滅多に降らないしきつねはあんまり嫁にいかない
明日から死ぬまで分の傘を買う「端から端まで全部ください」
見よう見まねの連作もどき13首。全部雨の歌。主人公に一貫性がないから連作って言っていいのかわからない、言っていいのならはじめての連作です。急に作りたくなって作ったから推敲が甘いけれど。
部屋からでなくていいのなら雨の日は好き。靴下が濡れるのはほんとうに嫌だ。